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はじめに
 医学の進歩や国民の意識の変遷とともに、病院に要求される内容も変わってきました。日生病院でも、本シリーズで紹介させていただいているような高度な医療を実践できるようになりました。しかし、社会は、さらなる機能を医療界に要求してきたように思います。すなわち、疾病の予防、病気の早期発見であります。病気の予防や早期発見は患者様にとって最も望ましいことであると同時に、医療費の抑制にも繋がります。例えば、糖尿病の医療費は何兆円もかかっていますが、多くの糖尿病は予防可能と考えられております。
従来より、労働安全衛生法等で企業は職員の安全と健康を守る義務を負っており、企業健診が行われてまいりました。しかし、もう少し積極的に健康増進を図るための政策が次々と打ち出されてきております。「健康日本21」や「健康大阪21」の政策が出されて以降は、社会全体に影響をもたらすような目標が掲げられるようになりました。肥満や喫煙率の抑制等には数値目標が設定されました。しかし、最近公表されました結果によると、残念ながら改善率は目標未達に終っております。そこで、医療法改定の一環として、検診内容が平成20年から大幅な改定が行われることになりました。その骨子は、i)被雇用者の配偶者、国民保険加入者で40歳以上の者も、検診を受けさせる義務を各保険組合に負わせる、ii)特定検診としてメタボリックシンドローム(腹囲が男性85cm、女性が90cm以上で、高血圧、耐糖能障害、高脂血症のうち何れか2項目以上が該当する人)を対象とした検診を行う,iii)検査を行うだけではなく積極的に保健指導を行う、等であります。日生病院予防医学センターは、既に一定レベル以上の施設であるとして、日本人間ドック学会からの機能評価の認定は受けておりますが、このような変革に対応すべく、健診受診者の皆様や健康保険組合様から更にご満足いただけるように体制を拡充強化しているところであります。

T 日生病院予防医学センターで行っている健診内容
当予防医学センターでは、健診受診者の色々なご要望に応えるべく、多岐にわたるコースを準備しております。以下にそれらの概要を紹介いたします。

1)人間ドック(表1)

a) 半日ドック
受診者は朝8時に来院いただき、遅くとも12時半には全てが終わるようになっております。問診、検尿、採血から始まり、心電図、腹部超音波検査、胸部レントゲン、胃透視(または胃カメラ)、医師の診察になります。女性は子宮ガン検診などが入ります。採血などの多くの結果は、当日医師より説明を聞いて頂くことになります。放射線検査は、放射線専門医が読影いたします。最終の正式な報告書は2週間程度で郵送をさせて頂いております。受診者のご要望により、色々なオプション検査も受けて頂けます。また、半日ドックコースに脳ドックを併用して受けられる受診者も多くおられます。遺伝子診断も項目により可能であります。

b) スペシャルドック
 このコースでは、1泊2日または2泊3日で、画像、内視鏡を駆使して、詳細な検査をお受けいただくことになります。初日は、問診、検尿、採血に始まり、心電図、腹部超音波、頭部のMRIとMRA(脳の血管を映し出す方法です)、医師の診察、栄養士による栄養指導を行います。終了しますと契約ホテルで1泊していただき、翌朝は胃カメラ、心臓超音波検査を受けて頂くとともに、大腸検査の準備に取り掛かります。下剤等を服用後に全大腸内視鏡検査(CFS)を受けて頂きて終了となります。希望によりPET検査も行います。約2週間後に来院いただき、結果を医師から聞いていただき、今後の療養の仕方の指導を受けていただき、必要時は紹介状などを発行しております。

c) レディースドック
 レディースドックを昨年度から開始しております。この日は女性の受診者に絞らさせていただき、全ての検査は女性スタッフで行われております。コースは問診、検尿、採血で始まり、胸部X線の後、婦人科健診を受けていただきます。腹部エコー、心電図検査、上部消化管造影を行い、最後に医師の診察結果説明を受けていただきます。内科医、産婦人科医をはじめ、検査技師、放射線技師は全て女性であります。また、希望により受けていただくマンモグラフィーも女性が担当いたします。

d) 脳ドック
 当センターの脳ドックでは、心理テストや記名力検査をした後、脳MRIとMRAを撮影し、頚動脈エコーによる血管病変の程度を検査します。また脳病変を引き起こしやすいと言われている心臓疾患についても心臓エコー検査などで精査いたします。また血管病変を引き起こしやすいと考えられている糖尿病やインスリン抵抗性などもブドウ糖負荷試験で調べます。特に、中年以上で、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病等のリスクファクターをお持ちの方は、検査を受けていただき、発症予防に繋げていただければと思います。

e) 肺がんドック
 早期の肺がんを発見することに特化したドックです。肺のCT、喀痰細胞診、肺がんの腫瘍マーカーが中心に検査を進めていきます。肺がんは、早期で見つからなければ予後が悪く、胸部単純レントゲン検査だけでは早期発見が困難とされています。喫煙者などリスクの高い人が明らかになっておりますので、高リスクの人は是非肺がんドックを受けられることをお勧めいたします。


2) 企業健診と無料定額健診(表2)
 年2回の定期健康診断を主とした企業健診を行っています。法定以外も高度医療機器を使った検査をオプションで希望される方には、適宜対応させていただいております。また、高齢者施設や身体不自由児の施設なども、無料ないしは低額で健診をおこなっています。この活動は福祉団体として発足した当公益財団のルーツ的活動であり、現在も行っております。それ以外の活動として、職業病健診、入社健診なども行っております。

U 平成20年以降の法改正に対する対応

 平成20年度からは、配偶者検診が始まると同時に保健指導の強化が制度として導入されます。企業には順守義務があり、違反企業には老人保健への供出金の割り増しなどが導入されるのではないかとの話もあり、企業にとっても経営問題となりつつあります。当センターでは保健指導部(仮称)を増設し、保健指導を強化するとともに、より効果的な特定検診の方法を検討中であります。ITを使った食事指導、理学療法士などの専門家による運動療法の導入などを考えています。予防医学センターも受診者から病気を出さない努力を求められる時代となってまいりました。
以上、我々が行っております健診について概説をいたしました。一人でも多く人で、病気が予防でき、万が一病気になっても早期治療により治癒にもっていけることを願っております。当センターの人間ドックでも、受診者の約1%強に早期がんが見つかっております。これは予想した数字よりも高いものであり、健診の重要性を強く示唆しているものと考えております。たとえ、病気が発見されても、高度医療を行える日生病院各科と連携し、万全の治療を行うことが可能であると考えております。この機会に読者におかれましては、健診について今一度お考えいただければと思っております。


表1   日生病院予防医学センターでの人間ドックの内容

人間ドックの種類 内 容

半日ドック 最も一般的なドックで、朝8時開始で昼過ぎには終了します。胃透視、腹部エコー、心電図、胸部X-P、血液検査など、網羅的に健診が可能です。
スペシャルドック 内視鏡、CT, MRI, 超音波検査、血液検査を駆使して行う健診です。疾患を引き起こしやすい全ての臓器の精査が可能であります。1泊2日が原則であります。
レディースドック 全てが女性のスタッフで行われる女性のためのドックです。産婦人科的、ホルモン学的な検査が追加されますが、一般ドックも充実しております。
脳ドック 脳の機能と形態に特化したドックです。また脳の機能に異常を引き起こしやすい、心臓、血管、糖尿病など検査も充実しています。
肺がんドック 肺がんの早期発見に特化したドックであります。胸部CT, 喀痰細胞診、腫瘍マーカー等が中心のドックです。
予防医学外来 健診結果に基ずいて、保健指導や生活指導をご希望される方に受診していただいております。食事療法などは管理栄養士が担当いたします。
禁煙外来 禁煙は病気予防には極めて重要との考えに立ち、日生病院での禁煙指導は予防医学センターで行っております。禁煙補助薬の処方は勿論、種々のツールを禁煙を使い指導いたします。


表2   日生病院予防医学センターでの企業健診

健診の種類 内 容

企業の定期健康診断 年1−2回の企業の定期健康診断を行っています。オプション検査に関しては、適宜企業と契約を行います。
無料低額健診 身体障害者施設や老人施設の健診を社会貢献の一環として行っています。
入社健診 会社への採用時検査で、内容については各企業と相談し契約をさせていただいています。
職業病健診 仕事の内容により、職業病を発生する可能性のある職場を対象とした健診です。有機溶媒使用者、塵肺の可能性のある職種などが対象です。


日生病院 予防医学センター 佐藤文三