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乾癬センター

概要

乾癬は炎症性角化症に分類される難治性皮膚疾患です。約12%以上の患者に関節炎を併発します。いまだ完全に病因は解明されていません。皮膚症状、関節症状のため乾癬患者さんのQOLは身体的、精神的にも著しく障害されています。また有病率は増加傾向にあり人口の0.34%、43万人と推定されます。乾癬の治療は最近10年で生物学的製剤の登場など新薬の開発も進み治療は飛躍的に進歩しました。患者さんの重症度に応じた積極的な治療が求められます。一方近年乾癬は多くの併存症(メタボリック症候群、高脂血症、心血管系障害、糖尿病、関節炎、ぶどう膜炎、肺気腫、慢性腎不全、炎症性腸炎、骨粗鬆症、鬱病など)があり全身の炎症性疾患であると認識されています。乾癬は皮膚のみならずトータルマネージメントを要する疾患です。乾癬患者のQOL及び生命予後の改善をめざして①最適な治療により早期かつ安全に皮膚症状・関節症状を寛解に導く②併存症の早期診断や治療により乾癬患者の健康状態の改善を図るとともに、合併症の発症を予防し心身ともに健全な状態に導く③大学やその他の医療機関と協力して乾癬に関する病態の解明、治療の進歩に貢献しうる臨床研究.臨床治験を行うことを目標に2019年4月に乾癬センターを開設しました。当センターでは院内関連診療科、多職種の密なる連携による乾癬のトータルマネージメントを行います。

掌蹠膿疱症は手掌・足底に鱗屑、水疱、膿疱を伴う落屑性紅斑局面を生じ、爪変形や時に、掌蹠外にも角化性紅斑多発し、再発を繰り返し慢性に経過する疾患です。約10%の患者に関節症を合併し前胸部痛を主訴とすることが多く他の関節や骨病変を伴うこともあるので掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ばれます。関節症状は、日常活動、社会活動に著しい障害をもたらします。一方掌蹠膿疱症の病因として、喫煙や病巣感染(歯周病、歯根病変、扁桃炎、副鼻腔炎)などが関与しており、これら原因の除去により症状が改善することもあります。掌蹠膿疱症・掌蹠膿疱症性骨関節炎では皮膚科、整形外科、免疫内科、耳鼻科などがチームで診療します。

特色・トピックス

乾癬の皮疹と関節炎の治療

乾癬の皮疹の早期改善をめざすオーダーメイドの治療選択

乾癬治療のピラミッド計画

適切な重症度の評価(皮疹の重症度・QOL障害・併存症から)のもと、患者さんが最も困っておられる症状、例えば爪乾癬や頭皮のふけ、かゆみなどに焦点をあて、乾癬治療のピラミッド計画を提示しながら患者さんと相談しながら治療方針を決めていきます。

部位、症状別に最適な外用剤を選択し外用指導を行います。また光線治療はエキシマライト、手足型光線照射機器、全身型ナロー照射機器、入浴PUVA療法などを選択します。内服療法(エトレチナート・シクロスポリンA、アプレミラスト、メソトレキサート)は重症度、合併症、年齢などを考慮し選択します。また既治療で効果不十分な患者さんには生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキシキズマブ、ブロダルマブ、グセルクマブ、リサンキズマブ、ビメキズマブ)も積極的に使用しています。乾癬性関節炎にはJAK阻害剤も使用します。

乾癬性関節炎の早期診断・治療

乾癬性関節炎には種々の鑑別を要する疾患があります。乾癬センターでは、皮膚科医、免疫内科医、整形外科医が連携して乾癬性関節炎の診断・病気の活動性の評価、治療方針の決定を行います。

乾癬性関節炎は進行すると関節の拘縮・変形をきたし日常生活に支障をきたすこともまれではなく早期診断・治療が重要です。診察・関節エコー・骨単純撮影・MRI・血液検査などを実施し診断いたします。治療は内服薬・生物学的製剤・リハビリテーションなどを行います。

*掌蹠膿疱症・掌蹠膿疱症性骨関節炎の治療

 かかりつけ歯科医院と連携し歯周病、歯根病変の精査治療、耳鼻科と連携し扁桃炎、副鼻腔炎などの病巣感染の検索と除去、禁煙指導などを行います。難治症例では外用療法、内服療法、光線療法や生物学的製剤の投与を選択します。

皮膚疾患ケア看護師(日本皮膚科学会認定)によるサポート

外用指導、看護相談、生物学的製剤自己注射指導も行い、患者さんの早期寛解をサポートします。

併存症の早期診断と予防

院内関連診療科とのチーム医療

乾癬治療をめぐるチーム医療

積極的に併存症の診断・治療に努めています。
初診時、採血(高脂血症・糖尿病・肝機能障害・高尿酸血症・腎障害・感染症)、血圧・体重・身長・BMI・腹囲測定、症例により頚部動脈エコーを施行します。併存疾患が疑われると院内関連診療科へご紹介します。
(特に紹介頻度の高い診療科 ... 整形外科、リハビリテーション科、総合内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、脳神経内科、神経科・精神科、予防医学センターなど)
関連診療科・多職種による臨床カンファレンスを開催し、横断的に乾癬患者さんの併存症の予防と治療を行います。

外来での集団患者指導を新たに開始

当センターでは、乾癬・乾癬性関節炎の早期改善・悪化予防、併存症の治療のため、栄養指導、リハビリ指導、看護指導・相談などを行います。
指導内容:リハビリテーション室理学療法士による運動指導、看護師による生活指導や外用指導、管理栄養士による栄養指導(糖尿病・高脂血症・高尿酸血症・肥満など)

「大阪乾癬患者友の会」の幹事による懇談会を開催

「大阪乾癬患者友の会(梯の会)」は、患者さんの療養を支援する目的で1998年に設立されました。事務局は当院皮膚科です。患者さん同士、患者さんと医療者の架け橋となっています。機関誌の発行、定期的に学習会を行っています。

乾癬に関する病態の解明、治療に関する臨床研究・臨床治験

乾癬の病態や治療については、まだ完全に解明されていません。当センターでは、大阪大学や全国の乾癬治療施設と協力して、乾癬に関する病態の解明、治療に関する共同研究を行っています。院内の他科連携により臨床研究も今後すすめて行く予定です。また、乾癬・乾癬性関節炎の新薬の臨床治験も実施しております。

地域医療機関との連携

乾癬限定初診外来(紹介状と予約必要)を設けています。乾癬の初診患者さんは乾癬初診外来(紹介状必要)へご紹介ください。難治症例、乾癬性関節炎、合併症のある初診の乾癬患者さんを、診察させていただきます。症状寛解後、維持治療は地域医療機関と連携し、逆紹介いたします。

スタッフ

乾癬診断・治療

東山 眞里(特任副院長兼皮膚科部長)

林 美沙(皮膚科副部長)

乾癬性関節炎の診断・治療

辻 成佳・高見 賢司(整形外科)

小中 八郎・廣海 汐理(呼吸器・免疫内科)

併存症の診断と治療 総合内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、脳神経内科、眼科など各診療科担当医
看護相談・指導 日本皮膚科学会認定皮膚疾患ケア看護師
栄養指導 中村 由美(管理栄養士) 他
リハビリテーション 辻 成佳(リハビリテーション科部長)・理学療法士