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主な疾患(治療方法)

当科で実施する内視鏡検査・手術について

産婦人科内視鏡手術は低侵襲手術、患者さんに優しい手術として多くの施設で行われるようになってきました。内視鏡手術には、お腹に小さな穴(傷)をあけて腹腔鏡(カメラ)とお腹の中で操作する鉗子を挿入して画面を見ながら手術を行う腹腔鏡下手術と、子宮の中に子宮鏡(カメラ)を入れて子宮の中の腫瘍を切除する子宮鏡下手術があります。主に子宮筋腫や卵巣腫瘍などの婦人科良性疾患に対して行っていますが、他にも不妊症専門クリニックと連携し不妊症治療目的の内視鏡手術も積極的に行っています。
内視鏡手術のメリットは、とくに腹腔鏡下手術では術後疼痛が少ないため早期の離床、退院、社会復帰が可能であること、腸管が空気にさらされず手で触ることもないので術後癒着、術後腸管麻痺が少ないこと、傷が小さく美容的に優れていること(イラスト参照)などがあります。私たち術者にとっても、お腹の中の死角が解消され、拡大された視野で安全に手術を行うことができる方法なのです。一方であまりに腫瘍(子宮筋腫や卵巣腫瘍)が大きかったり悪性腫瘍である場合や、お腹の中の癒着が著しいときには腹腔鏡下手術は行えませんし、癒着を剥離したり出血を止める操作を伴う場合は手術時間が延長します。また腹腔鏡下手術では膀胱や腸管などの損傷の可能性が高いという報告もあります。2018年4月現在、当科では6名の医師が日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡下手術技術認定を取得しており、このようなデメリットを克服し安全な手術を行うよう心がけております。
当院産婦人科では1997年に内視鏡手術を導入しました。最初はごく限られた症例のみに行っていましたが、徐々にその適応を広げて、今では多くの手術をさせていただくようになりました。2000年では産婦人科総手術が421件で内視鏡手術が214件、2010年では同総手術903件で内視鏡手術が598件、さらに2015年(度)では同総手術1,105件で内視鏡手術が754件(うち子宮鏡手術76件)でした。内視鏡手術の占める割合はほぼ70%となっています。しかしこのような症例経験数よりも大事なことは、一つ一つの手術を安全に、丁寧に、そして確実に完遂し、患者さんに喜んで無事に退院していただくことであると考えています。

子宮鏡下手術

まず婦人科外来で行っている子宮鏡検査について説明します。
原因がはっきりしない過多月経や不正性器出血があり子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープが疑われるとき、子宮奇形、子宮内異物、子宮内腫瘍などが疑われるときに行われる検査です。月経が終わったころに婦人科外来で行い、細いカメラを子宮口から子宮内に挿入して子宮腔内を観察します。とくに麻酔を必要とするほどの痛みはありません。この検査で切除すべき異常が見つかった場合に子宮鏡下手術へ進みます。

子宮鏡下手術とは

子宮口から子宮の中に、先端に電気的切除ループのついたカメラ(子宮鏡)を挿入して、子宮の中の腫瘍を切除する手術です。子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープ(過多月経、不正性器出血、不妊症などの原因となります)、子宮内異物、子宮奇形、子宮腔内癒着などに対して行われます。麻酔はほとんど脊椎麻酔で行いますが、時間を要する場合は全身麻酔を行います。入院は2泊3日から3泊4日です。
お腹を切開する手術ではありませんので、術後疼痛はほとんどなく、術後腹腔内癒着は起こりません。分娩に際しては帝王切開が必要となることは少ないです。
症例には制限があり、とくに子宮粘膜下筋腫ではサイズが大きなもの、突出率の悪いもの(子宮腔内にあまり飛び出していない)は子宮鏡下手術ができないことがあります。

内視鏡手術と不妊治療

元来、腹腔鏡検査や子宮鏡検査は、妊娠の妨げになり得る異常がないかどうかを、直接眼で見ることができるため、不妊症の原因の診断に役立つ検査として進歩してきました。特に子宮内膜症や軽度癒着などは腹腔鏡検査以外に見つける方法はありません。
当科ではほとんどの良性疾患を内視鏡下に手術しています。低侵襲で整容性に優れ、術後の回復が早いだけでなく、術後の腹腔内癒着の程度も開腹手術より少ないことが知られています。

  • 卵管閉塞については、卵管出口周囲の癒着剥離することで卵管が開通する場合は、その後自然妊娠が可能となるケースがあります。しかし再度癒着を起こし卵管閉塞が再発することもあり、卵管閉塞と診断された場合は、腹腔鏡手術を受けるか、体外受精するかについては、不妊症の専門医とよく相談してください。
  • 卵管留水腫は、卵管の出口が閉塞したために、卵管内に分泌物が貯留した状態です。自然妊娠のみでなく、体外受精をするのにも不利となることが知られてきました。当科では、不妊治療クリニックからの紹介された患者様については、希望される方に卵管切除術を行っています。
  • 子宮内膜症は、卵巣チョコレート嚢胞や子宮腺筋症などの腫瘍性病変となる以外にも、様々な形で腹腔内の炎症や癒着形成の原因となります。軽度の子宮内膜症の場合は、まずは妊娠をトライしてもらうよう指示していますが、チョコレート嚢胞のサイズが大きい場合や妊娠の妨げになるような状態の場合は、腹腔鏡にて手術(嚢胞摘出術や内膜症病巣除去術)を行っています。
  • 子宮筋腫は、サイズの大小に関わらず症状がある場合は、筋腫のみ核出することができます。ただし筋腫を切除した場合は、その後の妊娠については3~6か月程度の避妊を必要とすることや、分娩の際には帝王切開術を選択することが多くなるため、その後の妊娠の計画についてもよく相談したうえで手術を行うのが望ましいです。
    子宮粘膜下筋腫や内膜ポリープなどは小さくても受精卵の着床の妨げになることがあります。こうした場合、外来で子宮鏡検査にて子宮内膜の状態を観察し、子宮内腔への影響を確認した後に、腰椎麻酔下に子宮鏡下での摘出術を行います。
    その他、不妊治療クリニックからの依頼で、多嚢胞性卵巣症候群に対する卵巣ドリリング手術や、卵巣生検を行っています。

妊娠希望の方は、まず手術をするか不妊治療を進める方がよいかを不妊治療の専門医とよく相談してください。手術を選択された方に対しては、当院では熟練した手術技術を提供し、妊娠の成功に向けて最大限の協力を惜しみません。

子宮内膜症

子宮内膜症とは、子宮内膜またはそれに似た組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患です。子宮内膜症は女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖するため月経のたびに増悪し、様々な症状を引き起こします。このため妊娠中や授乳中、閉経後など月経がない時期には症状は改善します。
20~30代の女性に発症することが多く、好発部位は卵巣・子宮周囲の腹膜・卵管などで稀に肺や腸にもできることがあります。卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)などの病巣を作ることもあれば、腹腔内癒着として画像に現れない病変もあります。
症状は「痛み」と「不妊」です。月経痛が9割の患者さんにみられますが、月経時以外にも腰痛や下腹部痛、排便痛、性交痛を認めることがあります。また、妊娠を希望される年齢の女性に発症するため、不妊の原因として重要です。内膜症患者さんの3割に不妊があると考えられています。
治療法は「薬」と「手術」に分けられます。症状や年齢、妊娠希望などを総合的に判断してそれぞれの患者さんに合った最適な治療を選択します。薬としては、対症療法(鎮痛剤、漢方)とホルモン療法(低用量エストロゲン/プロゲスチン配合剤、低用量ピル、GnRHアゴニスト、黄体ホルモン剤など)があり、女性ホルモンの分泌を抑えたり直接病巣に作用させたりして症状を緩和します。卵巣嚢腫などの病巣部がはっきりしている場合には手術を考慮します。妊娠を希望する場合には病巣部のみの摘出を行い、子宮や卵巣を温存する手術を行います。内膜症による腹腔内癒着が高度の場合には手術操作は難しくなりますが、当科ではほぼ全ての内膜症手術を腹腔鏡で行うことが可能となっております。
子宮内膜症は、どの治療法を選択しても再発の頻度が高いこと、卵巣の内膜症性嚢胞は稀に癌化することが知られているため、再発予防の内服や長期にわたる経過観察が必要です。

子宮筋腫

こんな症状はありませんか?

  • 生理の量が多い。生理の時にレバーのような血の塊が出る。
  • 貧血があるといわれた。
  • 痛み止めが効かないくらい生理痛が強い。
  • お腹に硬いしこりを触れる。
  • 膀胱炎ではないのにおしっこの回数が多い。

こんな時はまず産婦人科を受診してください。子宮筋腫が見つかることがあります。

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍でコブのようなものです。このコブのために上のようないろいろな症状を惹き起こすことがあります。
子宮筋腫があればすべて治療をしなければならないわけではありません。貧血、生理痛の程度が強かったり、大きな子宮筋腫であったりする場合には治療が必要なことがあります。
子宮筋腫の治療法には、薬物治療(ホルモン剤、漢方薬)、子宮動脈塞栓術、集束超音波治療法などのお腹を切らない治療と、子宮をすべてとってしまう子宮摘出手術、子宮筋腫だけをとる子宮筋腫核出術といった手術療法があります。
どの方法で治療するかは、症状の程度、子宮筋腫の大きさ、個数、できている部位、年齢、挙児希望の有無、患者さまの希望などを総合的に判断して決定します。

ここでは、当院で行っている子宮をとってしまう治療、そのなかで低侵襲手術である腹腔鏡下子宮摘出術をご紹介いたします。この手術法は子宮筋腫だけでなく、初期の子宮頸癌や子宮体部癌、その他の子宮の病気でも行うことがあります。
この手術方法は当院で行っている低侵襲手術のひとつです。創が小さい、術後疼痛が軽い、術後の回復が早く、入院期間が短い、社会復帰が早く行えるなどのメリットがあります。

手術の実際Ⅰ

麻酔は全身麻酔を行います。お腹の創は、原則的に臍部10mm1ヶ所、下腹部に5mm3ヶ所ですが、子宮の状態によってはさらに1~2ヶ所、5mmの創をつくることがあります。臍部の創から腹腔鏡をお腹の中に入れ、あとの5mmの創からお腹の中で操作をする機器を入れます。また、お腹のなかに炭酸ガスを入れて膨らませ(気腹法)、手術視野を確保します。

手術の実際Ⅱ

手術は、お腹の中に入れた腹腔鏡(カメラ)からの映像をモニターに映し出し、それを見ながら手術を行います。子宮と卵巣は基靭帯、円靭帯、骨盤漏斗靭帯といった組織に支えられています。これらの靭帯をお腹の中で切断します。また子宮には子宮動静脈、卵巣には卵巣動静脈という太い血管が流れこんでおり、これら血管も同じようにお腹の中で切断します。つまりほとんどお腹の中で子宮を身体から切り離してしまうのです。

手術の実際Ⅲ

子宮は膣あるいは臍創部から取り出します。大きな子宮の場合は細かく切り分けて摘出します。子宮を取り出したあとは膣断端を縫合します。創は細い糸で目立たないように縫います。

手術の合併症、偶発症

手術に際しては、腹腔鏡手術に習熟した産婦人科医が細心の注意のもとに行いますが、腹腔鏡手術に限らずすべての手術で合併症、偶発症が起こる可能性があります。
例えば、術中術後出血、周囲臓器(腸管、膀胱、尿管など)損傷、血栓塞栓症、術後感染、術後イレウス、皮下気腫などです。決して頻度の高いものではありませんが、もし起こってしまったら早急、適切に対処いたします。

腹腔鏡下子宮摘出術の限界

すべての子宮をこの手術法で摘出できるわけではありません。巨大な子宮筋腫、筋腫のできている場所が手術には不適切(子宮頸部筋腫など)、今までにお腹の手術をしたことがあり著しい癒着(子宮と腹壁、子宮と腸管、腸管と腹壁、腸管どうしなどが強くひっついている)が予想される、患者さまの元々の病気のために全身麻酔がかけられない、悪性腫瘍の可能性があるなどの場合、開腹手術が必要となります。
また、腹腔鏡下に手術を開始しても、出血が多くなったり、癒着が著しい場合などは手術中に術式を変更し開腹術に移行することもあります。これは手術を安全、確実に遂行するためのものですので、ご理解のほどお願いいたします。

当科で行っている婦人科悪性腫瘍治療について

婦人科の癌で最も多いのは子宮癌で、子宮癌には子宮頸癌と子宮体癌(内膜癌)があります。同じ子宮の癌であっても、 子宮体癌と子宮頸癌は、診断・治療・予後のすべてが異なります。当院では手術療法、放射線療法、化学療法、緩和治療を組み合わせる集学的治療を行っています。

子宮頸癌

  • 子宮頸癌は、子宮口周囲に発生します。また、多くの子宮頸癌はゆっくりと増殖しますが、癌細胞が見つかるより前に、まずは癌ではないが正常でもない細胞が見つかります。この細胞を異型細胞と呼び、細胞診ではこの段階から(つまり癌になる前の「前癌病変:子宮頸部上皮内腫瘍」から)診断することができます。これを見つける目的で行われるのが、一般的に「子宮癌検診」と呼ばれるものになります。
  • 子宮頸癌の罹患率は20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患率、死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。
    ヒューマン・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)の感染が、子宮頸癌の主な原因とされています。子宮頸癌患者さまの90%以上からHPVが検出され、ハイリスク・タイプ(16型や18型など)で浸潤癌への進展がみられやすいことがわかっています。
診断
  • まずコルポスコープという拡大鏡で子宮口周囲を観察した上で、頸部組織検査を行い、組織型を診断し、次に、内診にMRI、CTの画像検査を加え、進行期(広がり具合)を診断します。
治療
  • 手術療法(単純子宮全摘出術・準広汎子宮全摘出中・広汎子宮全摘出術など)または放射線療法が選択されますが、両者の併用、さらには化学療法を併用することもあります。基本的には日本婦人科腫瘍学会監修の『子宮頸がん治療ガイドライン』に則って治療方針を決定しています。
  • Ia1期までの早期癌で、妊娠のご希望があって子宮温存を希望されれば子宮頚部円錐切除術による子宮温存治療を行っています。最近は、若年者の子宮頸癌が増加傾向にあり円錐切除術の実施件数が増加しています。また、Ia1期以上であっても腫瘍径2cm以下、リンパ節・遠隔転移がないなどの条件がそろえば広汎子宮頸部切除術による子宮温存治療法も行っています。

子宮体癌

  • 子宮体癌は子宮内膜癌とも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜(月経で脱落する部分)から発生する病気です。子宮の筋肉に発生する病気の子宮肉腫はまた違う悪性腫瘍です。
  • 子宮体癌の罹患率は、40歳代後半から増加し、50歳代から60歳代にピークを迎え、その後減少しますが、近年、子宮体癌は年齢に関係なく増加傾向にあります。
  • 子宮体癌は、女性ホルモンの代表であるエストロゲンによって増殖するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。危険因子としては、閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満があります。また、乳癌のホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、更年期障害等に対するホルモン補充療法などで用いられるエストロゲン製剤の単独使用なども危険因子です。その他の危険因子として糖尿病、高血圧、乳癌・大腸癌の家族歴との関連が指摘されています。
診断
  • 内膜の組織検査で組織型を診断し、次に、内診にMRI、CTの画像検査を加え、進行期(広がり具合)を推定します。最終診断(組織型・進行期)は手術後の病理検査結果により決定します。
治療
  • 子宮体癌の治療は、手術療法が主となります。進行度により術式は異なります(単純子宮全摘出術・準広汎子宮全摘出中・広汎子宮全摘出術など。卵巣への転移を少なからず認めますので、卵巣は原則摘出します。場合により、術中病理検査を行い、組織型や子宮筋層への浸潤具合を評価し、必要に応じて大網部分切除術・骨盤内・傍大動脈のリンパ節郭清術も行います。)基本的には日本婦人科腫瘍学会監修の『子宮体がん治療ガイドライン』に則って治療方針を決定しています。手術後の病理検査結果により、必要に応じて放射線療法や化学療法を追加します。
  • 妊娠のご希望があって子宮温存を希望される方には適応に応じてホルモン治療も行っております。

卵巣癌

  • 卵巣にできる腫瘍には良性・悪性・境界悪性(悪性度が比較的低い)があり、85%は良性です。また、卵巣の腫瘍はその発生する組織によって大別され、上皮性、胚細胞性、性索間質性などの種類があります。卵巣癌の90%は上皮性です。次に多いのは、卵子のもとになる胚細胞から発生する癌です。
  • 卵巣がんの罹患率は、40歳代から増加し、50歳代から60歳代がピークです。卵巣癌の死亡率は、50歳以降増加して高齢になるほど高くなります。
  • 卵巣癌の発生には、複数の因子が関与していると考えられています。卵巣癌で遺伝的関与があるのは5~10%ですが、近親者に卵巣癌にかかった人がいる場合は、いない人に比べて発症の確率が高いといわれています。家族性腫瘍として、乳癌と同じく、BRCA1、BRCA2遺伝子の変異が知られています。ほかの危険因子としては、出産歴がない、骨盤内炎症性疾患、多のう胞性卵巣症候群、子宮内膜症が指摘されています。そのほか、肥満、食事、排卵誘発剤の使用、10年以上にわたるホルモン補充療法が危険因子である可能性があります。経口避妊薬の使用は、卵巣癌のリスクを低下させます。
診断
  • 卵巣は子宮と異なり術前に組織検査を行うことができませんので、超音波で卵巣癌が疑われた場合には、MRI、CTの画像検査を加え、癌の可能性や進行期(広がり具合)を推定します。術中の迅速病理検査にて組織診断を行い、ここで初めて癌としての組織診断がなされます。最終診断(組織型・進行期)は手術後の病理検査結果により決定します。
  • 癌の可能性の評価や転移などの評価指標として、また、治療の効果判定などのために、腫瘍マーカーが用いられています。卵巣癌ではCA125と呼ばれるマーカーが代表的です。
治療
  • 主に手術療法と化学療法の組み合わせで治療を行います。術前に組織診断を行うことができないので、通常手術によって腫瘍を摘出することにより確定診断を行い、あわせて進行期も診断し、治療方針を決定します。基本的には日本婦人科腫瘍学会監修の『卵巣がん治療ガイドライン』に則って治療方針を決定しています。手術中に迅速病理診断を行い、癌の診断がなされれば、原則、子宮・両側卵巣・大網摘出を行います。また、骨盤内・傍大動脈のリンパ節郭清術も必要に応じて行います。ただし、癌の進行度によっては標準手術を行えない場合もしばしばあり、その場は可能な限り腫瘍の摘出を行います。術後は、化学療法を行い、初回手術で腫瘍の完全摘出ができなかった場合、再度腫瘍摘出手術を行います。
  • 妊娠のご希望がある方には、病状に応じて妊孕性温存可能な治療も行っております。

緩和治療

  • 緩和ケアは、癌が進行した時期だけでなく、癌が見つかったときから治療中も必要に応じて行われるべきものです。癌と診断されたときには、ひどく落ち込んだり、不安で眠れないこともあるかもしれません。治療の間には食欲がなくなったり、痛みが強いことがあるかもしれません。「つらさを和らげる」という緩和ケアの考え方を、診断されて間もない時期から取り入れることで、こうしたつらい症状を緩和しながら日々の生活を送ることができます。
  • また、癌の治療が難しいということがあっても、それはその患者さんに何もできないということではありません。痛みや吐き気、食欲不振、だるさ、気分の落ち込み、孤独感を軽くすること、自分らしさを保つことや、生活スタイルの確保など、緩和ケアではそれぞれの患者さんの生活が保たれるように、医学的な側面に限らず、幅広い対応をしていきます。つらい気持ちを「人に伝えること」が、あなたの苦痛を和らげるための第一歩になります。癌と診断されたときや治療中、あるいは治療後でも、痛みや、気持ちのつらさや不安があるときには、いつでも、担当医や看護師、がん相談支援センターに緩和ケアについて相談してください。